「志望校はどこにするの?」


担任の先生、塾の先生、親、友達。


みんなに聞かれるこの言葉。

聞く度にうんざりしちゃう。


でも、もう7月。


まだまだ中学生気分でいたいのに。


私もいよいよ受験を考えないと。



「今は北海志望です」


「北海かぁ。まぁ行けるだろう。まだ志望校だからもう少し上を目指したりもするように」

「はい」


塾の懇談。

私は一応北海高校志望。


公立だし私に向いてる。

行きたいわけではない。


でも、なんだか私が行く高校なんだと思う。


杏音みたいに、行きたい!って強く思ってる気持ちが少しうらやましく感じる。


今は、8ヶ月後の自分が全然想像できないや。




部活はいよいよ終盤を迎えている。


コンクールまで1ヶ月を切った。


やるからには、金をとりたい。


いや、とる。



クラスでは7月の席替えが行われた。


岩倉は原山 美愛(Harayama Mia)ちゃんの隣。


いつも楽しそうに話してる。

最近はそれが心配。


しかも6月も美愛ちゃんと隣だったから2ヶ月連続。

毎日ずっと岩倉は笑ってる。

美愛ちゃんの隣で。


私なんかキャリー以降話してない。

ていうか、キャリーも話したうちに入るのかなぁ。


話したい。


その気持ちだけがつのっていく。


目が合うことさえ少ないのに。



美愛ちゃんはクラスで1位、2位を争うぐらい可愛い。

目はぱっちりで、毎朝髪をきれいにくるくるに巻いてきてる。


大人っぽくて、女子には少し気が強いからあまり好かれてはいないけど、女子からの好感度とは反比例に、男子からモテモテだ。


あぁぁ、いいなぁ・・・。

ずるいよ、。



そして私はまた授業中とかもいつも岩倉を見ちゃってる。

やだな。
見たくないのに。

気にしちゃう。


声が聞こえるたびに気になってる。



「ゆーめっ」


「ひゃあ!!」

杏音が急に話しかけてくるから変な声出しちゃった。



「なぁに、焦ってんのよ?最近はぼっとしすぎだよ?私の話も聞いてないし」

杏音がぷぅっとリスみたいにほっぺを膨らませた。


「ごめん・・・」


私はうつむく。

わかってる、自分でも。

ここ最近、授業にも集中できてないし。


何やってんだろ、受験生なのにね。


でもね、気になるの。



「なんか最近あの二人仲良いよね? 岩倉と美愛」

どきん。


岩倉。

その言葉にどきどきする。


杏音には悪気はないのはわかってるけど、辛いよ。


「付き合ってんのかな、あの二人」

杏音がきゃっきゃっと言った。


だよね・・・。

杏音もそう思うよね。


私もそう思う。


あんな女子の前で楽しそうな岩倉見たことないもん・・・。

「うん・・・」


どうやったらこの気持ちはなくなるの?

ねぇ、勉強に集中させてよ。






そうだ。


やめたらいいんだ。



多分岩倉は美愛ちゃんが好きで、美愛ちゃんも岩倉が好き。


2人は両想いだよ。


私には叶わない恋だった。



ちょっぴり寂しいけどしょうがない。



逆に、2年間好きだったのにちょっぴりしか悲しくないってなんかいろいろと変だ。