微かに湿り気を帯びた風がフードを揺らす。

黒いローブを纏った少女たちが俯いたまま広場へと集合する様は、一体空からはどう見えるんだろう、と想像すると、知らずに口元が緩んだ。

フードが耳元でばさばさと騒ぐ。

立ち止まり、膝をついて両手の平を組む。

斜め右に、青白い顔色で地面を見つめる朝生柚希の姿を見つける。

その表情は固く、何かを我慢しているようで、また、何かに怯えているようにも見えて。

けれど声をかける事もしないまま、視線をそらして瞳を閉じる。

鐘がもう一度鳴るその瞬間まで、少女たちは再び祈るのだ。

天使の機嫌を損なうことがないように。
ただひたすらに、祈る。

口元に指を押し当てて、固く瞼を閉じる。

辺りは風の音に満たされ、周りの誰の息遣いも聞こえない。

木々が折れてしまいそうな程の音を立てながらしなる。

土と、微かな雨の匂い。


――「天罰が下るわ」


激しい風の音に紛れて、掻き消されてしまいそうな程小さな囁き。

瞼を開きかけたその瞬間、
降臨祭開始の合図を告げる鐘の音が、風を止めた。