噂は瞬きをする間も無く、校内の者全てへと浸透する。

皆憧れと微かな嫉妬の色を混ぜて菜摘を見つめ、拍手と祝福の言葉を贈る。

「それにしても驚いたわ。だって目が覚めたら、ドアの隙間に封筒が差し込まれているんですもの」

大袈裟にも見える笑顔とアクションで、菜摘は何度目かの話を始める。

誰にも気づかれないよう溜め息を落として、菜摘とは少し離れた席についた。

「始まってしまうのね、やっぱり」

思い詰めた表情を浮かべ、朝生柚希がテーブルを挟んだ向かい側の椅子に腰かけて、深い溜め息を落とす。

「なんだか、よくない気がするわ。……無事に降臨祭が終われば良いのだけれど」

か細い呟きは食堂の喧騒に紛れ、殆どが掻き消された。

私は言葉を返すこと無く、その思い詰めた表情をじっと見つめた。