次に目を覚ましたのは、激しく扉叩く音が煩かったからだ。

小さな舌打ちをしてから、まだ眠たい体を起こして扉を開く。と、同時に向こう側からも押し開けられ、額を扉に打ちそうになった。

寸前の所で扉は止まり、その影からは喜びを隠しきれないと言った様子の有本菜摘が顔を見せた。指先で摘まんだ封筒を、こちらに見せびらかすようにひらひらと揺らす。

「これ、なんだかわかるかしら?」

良いとも言っていないのにあっという間に部屋に入り込み、背中を預けよしかかる格好で扉を閉める。

私は菜摘の見せびらかす封筒を一瞥してから、小さくあくびをしてベッドへ腰を下ろした。

「学園内で販売している封筒よね?校章が刻印されているわ」

それがどうかしたのかしら?と首を傾げて微笑む。

事実、封筒だけなら光春の生徒、教師全員がいつでも購入できる。朝も明けきらない時刻、見せびらかす為にわざわざ級友を起こすほどの代物では、決して無い。

大した驚きも見せずに微笑む私を、けれど少しも不快には感じていない様子で菜摘は笑顔を崩さない。

その、細く長い指先で封筒を開き、中に入っている一枚の便箋を取り出し、開いてこちらに見せつける。

「見てよこれ。ここの一文!『汝を今年度の踊り子に指名する』ですって。なんて素晴らしいのかしら!私が、この私が踊り子に選ばれるなんて!夢のようだわ」


うっとりとした表情で話す菜摘の言葉に、目を見開いた。