陽が沈み、夜の帳もとっくに降りた深夜零時過ぎ。

月は雲に隠れ、ぼんやりとした三日月の影がうっすらと見える。

備え付けされた机の真横にある窓を上に押し開け、秋の夜独特の湿った風を部屋に入れる。昨夜の雨と、土の臭いを含んだ風。

ひとつ、大きく息を吸い込む。

空気を肺に満たしゆっくりと吐き出してから、机に開いていたノートを閉じた。

古い、フローリングの上を裸足で歩く。

赤い表紙のノートを、天井の高さまである本棚の一番上、ヨーロッパの古い童話集の横に差し込んで脚立から降りる。

ぎしり、と床が軋む音が静寂の中に小さく響いた。

深夜の、風と虫の声、それと古い寮の木が時折軋む静けさが好きだった。

ベッドに腰かけ瞼を閉じる。

そのまま後ろに倒れ、柔らかい羽毛に背を預けた。

窓からは微かに風が流れ込んでくる。

冷たい風に段々と部屋が満たされていく。

私は目を閉じたまま、風を感じる。