「ねぇ、敦の将来の夢はなに?」

「ん?俺の将来の夢?」

「うん」

「小学校の先生だけど」

雨が嫌いだから早く帰りたいと思っていたけど、足が止まってしまう。

2人の沈黙の間に、傘に沿って落ちる雨の音が響く。

知らなかった...。

というか、むしろ敦は小さい子があまり好きじゃないと思ってた。

「意外って顔してるね。

本当は、警察なんていいかなって思ってたけど、

俺みたいになんとなくで決めてるやつと、真面目に考えてる人達を見ると、

『あぁ、俺は対等に戦えない』って。

それで決め手になったのは、インターシップ!

警察官人気ありすぎて、譲ったの覚えてる?

それで枠が空いてた学校の先生の所に仕方なく入ったんだけど、

なんかあっちゃったんだよねー...運命の出会いに。

担当になったクラスは、2年生だったんだけど

先生がとにかくいい人で、何から何まで教えてくれて。

それと謎に、小さい子にもてるのさ。

それを見た先生が

『敦くん...だよね?

本当は、あんまり先生に興味ないけどきたんじゃない?

でも、学校の先生ってやってみないと分からないことがたくさんあるんだ。

敦くん、君は向いてる。

君みたいな人に私ども年配先生は、引き継いで欲しいと思ってるんだよ』って言われた。

それで決めたんだ、あんな先生になるんだって。

大学は国立大の教育科にいくよ。

真琴はどこいくの?」

「敦と一緒で国立大だけど、教育科じゃないよ。

でも明確に違うって今思った。

だって夢なんて敦みたいに決まってない。

とりあえず、行っとけばいいやって感じで、

真面目に第一希望にしてる人の1人の夢を、

私は潰したんだよ。

そんなのっ...!」

「真琴!」

突然私の体がふわっと柔軟剤の香りに包まれた。

私...抱きしめられてるの?