「いいじゃないですか!ちょっとくらい!!私とも遊んで下さいよ!!どうせ沢山遊んでいるんでしょう!?」
「えー、でも……彼氏いるんでしょ?君。俺ゴタゴタ嫌だからそういう子は相手にしないって決めてるんだよねぇ。」
「別れますから!どうせ好きじゃないし!!」
「うーん、そういう話じゃないんだよねぇ。」
争っている声が聞こえてきて、言葉を止める。心底面倒くさそうな兄貴の声音。それは初めて聞いたもの。
駄々を捏ねた時に「ショーがないなー」と言いながら甘やかしてくれた声音とは違う、冷たいもの。
そしてもうひとつは。
もうひとつの声は。
「なぁ、あの声、お前の彼女じゃねぇのか?」
「そう、だよな。」
龍が目を見開く。
「輝、なんでお前、笑ってるんだ?」
もうひとつの声は紛うことなき、俺の彼女であったはずの女の物だった。
兄貴の部屋の扉を開ける。
ガチャり、と引かれた扉に2人の目線がこちらに向く。
何故俺がいきなり何も言わずに部屋をあけたのか分からずに驚いている兄貴。
俺の顔を見て、認識して、気まずそうにしている彼女であったはずの何か。
そして、笑っている俺。
諦めると笑ってしまう癖がついた、俺。