だから俺は努力をした。兄ちゃんじゃなくて自分を見て貰えるように。


だから勉強もしたし、運動も人一倍頑張った。家の手伝いもして、料理だって出来るようにした。

それでも兄には適わなかった。だけどそれでもよかった。俺は兄と争っている訳では無い。

ちゃんと自分を見てもらえるように頑張っているのだから。


兄ちゃんは卵焼きを作るのが上手かった。俺は塩っけのある卵焼きが好きでよく作ってくれた。だけど、兄ちゃんは甘いのが好きだから俺は甘いのを練習した。

最初は上手くできなくて甘ったるいものを「上手いよ」って言って頭撫でてくれる兄ちゃんが好きだった。


高校に入って、兄ちゃんはいきなりグレた。髪の毛もアッシュに染めて高校デビューと言うにはあまりにも派手だった。

だけど、似合っていた。顔は随分と美形が完成されていて甘い感じのいかにも女を虜にする王子様、と言う感じだった。


反対に俺は、目付きが悪く育った。遺伝子的にも両親は美形だから不細工じゃない。ただ兄ちゃんとは正反対の顔。



だけど、個性だと気にしていなかった。




…………結論からいえば状況は変わらなかった。


俺がどれだけ努力をしても、兄ちゃんは俺よりも年齢が上で成長する。

その成長と兄ちゃんの頑張りは俺の努力なんて簡単でちっぽけな言葉では補えないほどの差をつけていた。