ポツリ、ポツリと語っていくお姫様。言葉を落とすと言う表現がまさにピッタリなほど。曇った顔から吐き出して落とされる雨粒の様な喋り方。

雨が降っていた、と言っていた。彼女の中ではまだ雨は降っている。やまない雨はない、とは言うけれどきっと彼女の中ではその雨はまだ止んでいない。

ポツリ、ポツリと胸の中にずっとずっと溜まり続けている。今にも溢れそうに。溢れそうになるのを堪えていて破裂の一方手前なのかもしれない。

それなのに、

「暗い話しちゃってごめんね!長かったよね。ただ自分が弱いせいなのにね!

今日、自分勝手に動いてごめんね、里香ちゃん。」

そんなことをお首にも出さずに笑い続けている。強いよ、あなたは弱くなんてないよ。

そう言葉にしようと思っていたのに。目に付いた別のもののせいで言葉はズレてしまう。

『晴れてるよ、千歩。月が綺麗だよ。』

「……え?」


お姫様も私が見ている方へと顔を向けてから笑う。

「えー?さっきから晴れてるよ?」

ふふふ、とおかしなことを言う人だと言うように笑う。それでも、瞳はまだ奥の方で濡れているから。

お姫様の手を引いて、抱きしめる。

お姫様の口からは「……え」という呟きが漏れるが気にしない。

私が落ち込んだ時は【あの人】が落ち着くまで抱きしめてくれた。話を聞いてくれた。励ましてくれた。あの体温が温かかった。あの大きさが愛おしかった。