「もうこのタイミングでバラすの?」

カラカラと笑って、私たちのいた所から毒牙の総長のところへと向かっていく椛さん。

なんで…、ねぇ、なんで。

なんでそこにいるの?椛さんが裏切り者なの?情報を流していたの?なんで?



「もみ…じ、さん!!どうして!」


龍くんの背中から声を張り上げる。龍くんが少し驚いたように私の体を持つ手が跳ねた。ごめんね、龍くん。


どうして
なんで
だって



私が敵に襲われた時に。毒牙に襲われた時に助けてくれたじゃない。1番に駆けつけてくれて、倒してくれたじゃない。


あれは、どうして?




「おー、そういえばよお椛。」


私の方を一瞥して、嘲笑いながら椛さんの方に手を回す。椛さんは何も言わずに受け入れていた。


「俺の部下、お前が殴ったんだって?」


「ええ、ごめんなさい。でもあの時に疑われるわけにはいかないって話をしたでしょう?必要な犠牲よ。それに、あいつら。私が裏切り者だってバラそうとしたのよ?」

そっか…、助けるためじゃなくて私たちを欺くためにあえて…。酷いなんて言葉では表せない。酷い……、酷いなんて言葉で片付けられる言葉ではないしそこまで悲劇のヒロインぶるつもりは無い。ただ、理由が知りたいよ、

「ああ、なんでって言ってたっけ?千歩。」


先程までは私の方を見ていなかったというのに、私の方へと首を回す。その仕草が怖かった。


雨が冷たい。肌を叩きつけてくる。
時折降ってくる大きめの雨粒がとても痛い。