鼻息を少し荒くして胸の前で両手を握って目をきらきらとさせていた千歩に、手招きをして入ってくるように促す。

そうすればトコトコとこちらへ歩いてきた。

私の隣にチョコん、と腰掛けたお姫様の表情は打って変わって先程までのアホな様子は見られなかった。

静かにお姫様は月を見る。先程お姫様が私に言った事の意味がわかった気がした。

ああ、綺麗だ。確かに。

月光と切なげな暗い表情が怖いくらいにあっていて……ここにいるのかと不安になる。

見ていて、月に吸い込まれそうで何となく竹取物語を彷彿とさせた。最後にはお爺さんとお婆さんの元から離れて行ってしまうかぐや姫。

そして、訳の分からないくらいに尖っている帝の顎。辞めて、ハンサムしないで。

……じゃなかった。

そっと手を伸ばして、お姫様の肩に触れる。

そうすれば肩をビクつかせてこちらを見た。お姫様の瞳に私が映る。それが何故か酷く安心した。

「ど、どうしたの!?び、びっくりしたぁ」

『いや、別になんでも。』

消えてしまいそうだったから……、なんて笑えてしまうじゃないか。私はここまでこの子に執着をしていない。

それなのに消えてしまうのが嫌だったって。ねぇ、私は今、誰と重ねてた?