◇◇◇
翌朝、ノックの音で目を覚ました。
「佐々本さん入りますよー」
「はい」
入ってきたのは昨日とは別の看護師さんだった。
「おはようございます。
血圧測りますねー」
昨日の看護師さんよりも若い女の人で、たぶん私と大して年齢が変わらないはずなのに、すごくしっかりしているように見えた。
「そういえば佐々本さん、知ってますか?
今ネットやテレビで大人気になってるんですよ!」
「誰がですか?」
「そりゃもちろん佐々本さんのことですよ!
『男の子を助けた天使』って動画がSNSで拡散されて、今や日本中で大人気!」
え…?
なに、それ…
「なに驚いた顔しちゃってるんですか!
天使みたいに白くて可愛い女の子だってみんな大絶賛ですよ?
今頃佐々本さんが無事だったってことも報道されて、さらに盛り上がってるんじゃないですかね」
やめて…そんなふうに目立ってしまったら…
「その動画って…事故のときのですよね?
…私の顔、映ってるんですか?」
「そう、事故のときのみたいよ?
なかなか衝撃的な映像だから、徐々に消されてるみたいだけど…
保存してる人はいるんじゃないかしら。
もちろんかわいいって話題になるくらいなんだから顔も映っちゃってるわよ」
…うそ……知ってる人がその動画を見たら…きっとすぐに広まってしまう。
「あれ、佐々本さんSNSとか写真NGなタイプだった?
でも安心して!ものすごくいい内容で噂されてるんだから心配いらないわ」
きっとすぐに誰かがお兄ちゃんの事件に気がつくはず。
そしたらまたお兄ちゃんや私を非難する声が殺到する。