ーーー久しぶりに幸せな夢を見た。
なんだか心が温かくなるような…そんな夢。
目を覚ますと、目の前にはきれいな顔の男の人がいた。
凶悪犯ーーー。
彼は自分のことをそう言ったけれど、私にはそうは思えなかった。
だって彼は私に優しかった。
所長から守ってくれたときだって、息を切らしながら走ってきてくれた。
私が職をなくさず、尚且つセクハラからも解放されるような、そんなやり方で守ってくれた。
それになにより、お兄ちゃんの無実を信じてくれた。
なにか悪いことをしなきゃいけない事情があったから、だから仕方なくするしかなかったんだって思う。
養子だって言っていたし…きっと子供の頃から大人に無理矢理やらされていたんだって、やるしかなかったんだって、そう思う。
…いや、本当の理由がどうだったかなんてわからない。
ただ私が、彼のことを悪い人だとは思いたくなかった。