しばらくして、俺たちの様子をずっと撮影していた報道陣も我慢の限界に達したのか、俺たちへ質問や苦情が飛び交い始めた。
「東堂さん、そちらの女性は今話題の佐々本小春さんですよね?
どういったご関係なんですか?」
「ちゃんと説明してもらわないと困りますよ」
みんなの視線を一身に集めながら立ち上がり、小春を横抱きにしたまま壇上まで戻った。
「小春。俺の横に座っていてくれるだけでいいから」
小春の体を壇上の椅子にそっと座らせて、その隣のイスに俺も腰掛けた。
「会見の途中にも関わらず、先程は申し訳ありませんでした。
皆さんご存知のとおり、今隣にいるのは、冤罪被害者の遺族、佐々本小春さんです。
彼女とは、結婚を前提にお付き合いさせていただいております。」
隣の小春を見ると、緊張しているのか俯いている。
俺はカメラには映らないよう、机の下で小春の手を取った。
「去年の11月に、新しい監視対象者として上から告げられたのが彼女でした。
はじめは…他の人のようにハッキングをして監視していました。
しかし、カメラを通して小春さんを知っていく度に、どんなときも一生懸命がんばる姿に惹かれていきました…」
それから俺は小春と初めて会った日のことや、一緒に暮らすようになったこと、大雅さんの無実を調べて公表したことを順に話した。