外の不穏な空気にマスコミが気づき始めていた頃、会見の最中に俺が話すのもやめて走って行ったもんだから、会場のざわめきは尋常じゃないものだった。
さらに極め付けに…
「蓮さん…っ!!」
今話題の小春が登場ともあれば、会場内はパニックに陥りそうなほどだった。
「…小春、会いたかった」
「…蓮さんが、無事でよかったです」
大粒の涙を流しながら、小春は車イスから立ち上がろうとした。
しかしーーー、
小春が立つことはなかった。
力なく床に座り込む小春の元へ俺が駆け寄ろうとしたとき
「ごめんなさい蓮さん…
私、もう一生歩けないんだって……」
小春が発した言葉は、俺の胸をえぐった。
「…っ、小春…」
俺は生中継されているということも忘れて、小春を抱きしめた。
昨日のニュースでは、男に襲われたとき怪我で抵抗できないほどだと言っていた。
だから怪我がひどいのだろうと多少の覚悟はしたつもりだった。
けれど…実際に小春の口から聞くと、俺の覚悟なんて全く役に立たなかった。
「ごめんな小春っ、側にいてやれなくて」
歩けないと聞かされたとき、小春は一人でどうしようもなく不安だっただろう。
これからだって、俺は逮捕されてしまう。だから一緒にいることはできない。
「ごめんな…ごめんな小春……」
この時俺は、人生初めて泣いたかもしれない。
痩せ細った小春の体を抱き寄せて、謝りながら泣くことしかできなかった。