先頭を行く松村さんの言葉を合図に、報道陣の中を駆け抜ける。


あと少し…あと少しでホテルに入れる!


「ゔ…っ」


突然、前を行く松村さんが呻き声を上げ立ち止まった。

「園田さん…やばいっス。
囲まれてるかも」


…そんな……まさか


「俺らが時間を稼ぎます。
ホテルに入ったら本部の奴らも待機してますし…園田さんは佐々本さんを連れて先に行ってください」


「わかった。

佐々本さん、怖いだろうから目を瞑ってて下さい。
…大丈夫、誰も死なないわ」


震えを抑えることもできなくなり、小春の体は小刻みに震えていた。


負けちゃダメ。
這ってでも、蓮さんの元へ行かなきゃ…



車イスから落ちてしまわないように手すりを握り、目を閉じた。
ぬいぐるみも落とさないよう、しっかり脇に抱え込む。




「走ります、しっかり掴まってて!」


今度は園田さんのその言葉を合図に、走り出した。
後ろでは、誰かが殴られているような音が聞こえた。


松村さんたちが無事でありますように……




しばらくして、ようやく本部の方々と合流できたようだ。


「佐々本さん、ここまで来れば会場まであと少しです。
引き続き気を抜かずに行きましょう」

「はい」


「では私たちが四方を取り囲みます。
会見の終了まであと少しです。急ぎましょう!」


本部の方々は、車イスを押す園田さんと私を取り囲むようにして走り出した。


「会場内はすでに我々や警察が警備しているのでそこまでいけば安全です。
あと少しですよ」


園田さんだって車イスを押したまま走り続けていて、きっとすごく体力を消耗しているはずなのに…それでも私を励ましてくれる。


私はただ座ってるだけなのに…

「ありがとうございます」


園田さんに出会えてよかったと、心から思った。