「彼…すごいっスね」
「松村、無駄口はいいから気合入れなさい。
佐々本さん、もうすぐ到着します。
証拠はまだ警察には渡っていないようなので、それを阻止するためにあなたを人質に取ろうとするかもしれません。
それか腹いせにあなたの命を奪おうとするかもしれません。
どこから狙ってくるかもわからない今、先ほどのように私があなたを背負うことは危険です。
今回は車イスのまま強行突破します」
私を…人質に…
そんなことさせない!
蓮さんが命を懸けて戦っているのに、私がそれの邪魔をしたくない。
「どんな方法だろうと従います。
ですがお願いです…皆さんどうかご無事で」
「かしこまりました。
では、こちらの帽子をお被りください。
行きましょう!」
車が停車すると、猛スピードで車イスが組み立てられた。
すぐに車イスの周りに松村さんたちが立ち、私は園田さんによって車イスに乗せてもらった。
「中継を見たマスコミが大勢集まっています。
俺が先に行って道を作るので、その後ろに続いて下さい!」
「僕たちは両サイドをカバーします」
「了解!行くよ!」
こんなとき、私が走れたらもう少し迷惑かけずに済んだのかな。
…ダメダメ!
今は余計なことは考えずに、ただ無事に蓮さんの元へたどり着くことだけを考えないと。
怖くてたまらなかったけど、胸に抱きしめたうさぎのぬいぐるみを見つめてなんとか震えを堪えた。
「おい!あの車イスって佐々本小春じゃないか?」
「なんでこのホテルにいるんだ!」
徐々に私に気づく報道陣。
向けられる視線がすべて悪いものに思えて、どうしようもなく怖かった。
昨日…足が動かないだけであんなにも抵抗できないなんて思わなかった。
今日だってもし何かあっても、私は自分の足で逃げ出すこともできない。
怖くて堪らない…
でも、蓮さんに何としてでも会うの!
「突入します!」