「やべぇな…渋滞してる」
車のデジタル時計が、会見開始時刻の13時になってしまった。
「会見…生中継されるみたいっスね」
カーナビを見ると『まもなく中継』の文字と、まだ誰もいない壇上が映し出されていた。
「時間少しすぎてるけど…蓮さん何かあったのかな…」
会見は13時からのはずなのに、すでに2分経過している。
蓮さんにもしものことがあったら……
「蓮さんは大丈夫です。
一足先に私たちの仲間を本部から派遣しました。
彼の護衛に当たってくれています。」
「蓮さんも護衛を頼まれてたんですか?」
「いえ、私の指示で行かせてしまいました」
そう言うと、園田さんはお茶目に笑ってみせた。
「え!それ大丈夫なんですか!?」
「さあ…どうでしょう。
私もこの仕事するにはもう年だし、そろそろこの仕事辞めるつもりだったんですよ。
最後に好き勝手しても問題ないでしょう?」
今まで見たことないような、素の園田さんを垣間見たような気がした。
「園田さん…本当に何から何までありがとうございます」
「お礼を言うのはまだ早いですよ。
ここからが勝負です。
すべて終わってから、その言葉聞かせてください」
「はい…っ!」
それから5分経過した頃、中継と書かれた画面から会場のマスコミのざわめきが聞こえてきた。
そしてーーー
「…っ、蓮さん!」
よかった…見た感じ怪我もない。
ついに、カメラの前に蓮さんが現れた。
『本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
まず、私がどういった人物であるかお伝えいたします。
私は東堂蓮と申します。
職業は、つい先日までハッカーをしていました。
私は…犯罪者です。
しかもただハッキングをしていただけでなく、女性のスマートフォンのカメラや、あらかじめ鞄などに取り付けた小型カメラを通して生活を監視していました。
そして、その映像をVIPと呼ばれる方々に提供する…それが私の仕事でした』
大きくざわめき立つ会場。
そりゃそうだよね…こんなの普通じゃありえない。
蓮さん…がんばって
『VIP達は私が渡した映像から好みの女性を決め、その女性を監禁するなどして性的暴力を振るっていました。
私は…そのことを知っていながら、幼少期からこの仕事を続けてきました。
何人もの女性達を巻き込み、彼女たちの人生を狂わせました。
私は今回、この組織を壊滅させるべくこの会見を開かせていただきました。
被害女性のデータや、組織に所属している人物の名簿、そしてVIP達のデータもすべて集めました。
証拠となる映像や音声も揃っております。
今回、この腐った組織を生み出したVIP達をすべて公表するつもりでこの会見を開かせていただきました。
まず、1人目は……』
蓮さんの力強い話し方は誰もを圧巻させていた。