◇琴音side。



急ぎすぎてつまづいた私を、誰かが腕を引っ張って抱きとめてくれた。


お礼を言いながら離れて顔を見てみると……見なきゃよかったと、後から後悔。



「大丈夫か?」と聞く彼に素っ気なく


「大丈夫です、ありがとうございました」



そう言ってまた、逃げるかのようにその場を後にしたのだった。



しかし、なんであんな寂しそうな……辛そうな顔をしていたのだろう。


彼のその顔がどうも頭から離れなくて、考えながらスーパーまでの道を歩いていた。



「あーっっ!!お財布忘れたぁ」


今日買う物を書いていたメモ帳を鞄から出そうとしたら、財布が見当たらない。



最後に見たのはお昼休みの学食のとき。


そういえば、お昼休み終わりギリギリになって急いでたから机の中に入れてたんだった。



今日、ほんとつくづくついてないなぁ……。