◆綾斗side。



逃げるかのようにいなくなった彼女。


俺がずっと想っていた奴。



あいつは俺のこと忘れたらしいけど、俺は一度たりとも忘れたことはない。



黒澤 綾斗、17歳高校2年生。


女好きって噂、チャラいって噂

俺に気に入られたら離れられなくなるって噂



全部知っているけど、女遊びを辞めない理由はただ一つ。


あいつが俺の存在に気づくため。



でもきっと、それがあいつは俺のことを嫌う理由でもあるだろう。



「俺、ずっと好きだったんだけど……」


なんて呟いても、静かな図書室に響くだけで琴音には伝わるわけなかった。