[だって正直に言うけど急すぎない?
喋ったこともないんでしょ?なのにいきなり告白されてさ………向こうも一目惚れ?]
「うん、それは私も思った。
一目惚れは確実にないなぁ。」
[でしょ?じゃあなんだろ、気になる。
これは面白い展開になりそう。]
楽しそうに声を弾ませる麻里。
うわぁ、すごく面白がってるよ。
[………まあでも、何かあったら私に言いなよ?その時は私が助けてあげよう。]
「それはありがとう?」
なんだかんだ心配してくれてるのかな?
[とりあえず明日が楽しみだねぇ。
学校で公表されたら女子の嫉妬が千紗を襲うよ?]
「…………あっ………」
まってまって。
忘れてた………。
橋本くんは学校1モテるという人なんだ……!
私とは格が違うから本来付き合ってはいけない存在なのに………!
女子に別れろって迫られそう。(別れるつもりはないけれど)
「あの、麻里?
呼び出しくらったら助けに来てね。」
[それは普通彼氏に言うもんじゃないかね?]
うっ……!
それは正論だ。
だけど付き合ってすぐ頼みごとなんて……ねぇ?ましてや橋本くんだよ?
[まあそん時はそん時ね。ちゃんと奢ってよ?]
「………わかった。助けてくれたらね。」
こういうこと言うの、麻里らしい。
[おっけ、任しといて。
じゃあもう寝るわ。おやすみ〜]
「はーい。おやすみ。」
そう言って電話を切り、布団にダイブする。
これは現実なのだろうか?
私は本当に橋本くんと付き合ったの……?
どう考えても橋本くんが私を選ぶ理由がわからない。
私は魅力なんか一切ない一般人というのに。
それに比べて橋本くんは全てが完璧の人間。格が違う。
それなのに彼は私を好き?
…………ああ、今日寝て明日の朝起きたら夢でした、というパターンなのかな。
そう考えていると本当に眠たくなってきて、気づけば眠りに落ちていた…………。
次の日。
目覚ましの音で起き、準備をして駅へと向かう。
結局昨日の出来事が本当かどうかなんてわからない。
でも思いのほかぐっすり眠れたということは………夢かもしれない。
なんて考えながら歩いていると一瞬で駅に着き、改札口を通る。
そしたら………
「……え?」
「おはよう中山さん。昨日俺をほって先に帰るなんてひどいよね。」
何故かホームに橋本くんがいた。
「な、な、なんで……いるの!?」
「なんでって……俺もここが最寄りだからかな。」
爽やかなスマイルで言う橋本くん。
ダメだ朝から心臓に悪いよ……。
「昨日はその、悪いかなーっと思いまして……邪魔者は退散しようと」
「中山さんが邪魔?そんなわけないよ。
俺の彼女なんだから1番隣にいてほしい存在の人なんだよ?」
………くあっ!
ダメダメダメ、死ぬ死ぬ死ぬ。
ドキドキして心臓音がやばい……。
「ご、ごめんね?もうしないから……」
「じゃあ今日こそ一緒に帰ろうね?同じ駅ってことがわかったんだし。」
私と同じ駅だと今日気づいたにしてはあまり驚いていない橋本くん。
まさか知ってたとか、そんなわけないよね………。
「なんで今まで一度も会わなかったんだろう?」
素直に疑問に思ったことを口にした。
「それはちー………………っ、いつもは一本遅いのなんだけどたまたま早く起きたから一本早いので来たら中山さんがいたんだ。」
「そっかぁ。」
…………って、ごめんなさい。
私が入学式以来恥ずかしくて一本早くしたんですよね。
でももし入学式と同じ電車で来てたら………毎日電車で橋本くんを見れてたってこと!?
最悪だ、もっと早くから気づいておけば……!
まあもういいのか。
今は一応付き合ってるから………。
だけど1つ疑問が。
さっき橋本くんが話す時変な間があったような………。
『それはちー』って言いかけてなかった?
何を言おうとしてたんだろ。
「中山さん?どうしたの、ぼーっとして。電車きたよ?」
「あ、いや……なんでもないよ。」
ま、いっか。
橋本くんは気にしてなさそうだし。
だから私はそんなに気にも留めないまま橋本くんと一緒に電車に乗り込んだ………。
電車に揺られ、ドアの前で橋本くんと並んで立つ。
ちらりと橋本くんを盗み見る。
うわぁ、鼻高いし横顔だけでこの破壊力………!しかも背も高いし………本当に完璧な人だ。
ほら、今も他校の女子が橋本くんを見ていた。
「どうしたの?」
「………へっ!?」
私の視線に気づいた橋本くんがこちらを見た。
「いやぁ、背が高いなって思って……。何センチくらいあるの?」
「そう?えっと、最後に測ったのが………183、だったかな。」
ひゃ、183!?
高すぎるよ。
しかもスタイルもいいし芸能人よりかっこいいね。
「でもこう見えて小学生の頃は小さかったんだよ。成長期が遅くて背の順は前の方だったんだ。」
「そーなの?意外だね。」
小さい頃の橋本くんとか………とっても見てみたい!
可愛い気しかしないよ……!
その後も特に気まずい空気が流れる事もなく駅に着いた。
そう、ここまでは良かったんだけど………
他の生徒たちがいる中、私が橋本くんの横にいると目立ってしまう。
今たくさんの人から視線を浴びている。
それなのに橋本くんときたら……
「あの、橋本くん…!」
「んー?どうしたの?」
どうしたの?じゃないです……!
駅に降りた瞬間手を繋ぎはじめた橋本くん。
「あのですね、目立つから………」
「あぁ、手?人が多いから手を繋いでたら離れることもないかなって思って。それにもう付き合ってるんだから。」
うっ……そんなストレートに言われたら………心臓がもたないんです……!
ていうかその前に……
今の橋本くんの言葉、多くの人に聞かれました。
「えぇ!?橋本くん付き合ったの……!?」
「誰あの女。」
「うそ!やだやだ!」
「いやぁ、なんで!?」
悲鳴まであげる女子生徒たち。
ああ………麻里……。
本当に危険な目にあったら助けてね。
そう思いながら橋本くんと手を繋ぎ登校した私。
昨日まで教室から橋本くんの登校姿を見ていたのに、今日から手を繋いで隣を歩く関係になっているなんて考えもしなかったよ………。
ーー「お、お、お、お前らなんで手繋いでんだ!?」
門に入ろうとしたとき、突然後ろから大きな声が聞こえてきた。
その途中もたくさんの生徒たちが私達を見て驚き、悲鳴をあげていた。
「おお、陽。今日は朝練じゃないんだな。」
「いやいやそれどころじゃなくて質問に答えてくれよ。」
振り向くと自転車に乗ってきていた津原くんがいた。
「そんなの付き合ったからに決まってるよ。
俺、中山さんのこと気になってて……昨日告白したんだ。」
その言葉に津原くんの驚いた顔だけでなく、女子生徒たちがショックを受けている顔が見えた。
「まって、橋本くんから……!?」
「なんでなんで?え、なんで!?」
「ありえない……」
「どうしてなの?」
………イケメンと付き合ったらこうなるのか。
「和也……なんでずっと黙ってたんだよ?
中山のこと好きなら言ってくれよな!協力したのに。」
えっ。
橋本くん、津原くんに言ってなかったの?
「別にこのまま片思いで終わるだろなって思ってたから誰にも言ってなかったんだ。」
………まって、なにその可愛い理由。
周りの女子も悶えてるよ……!
「そうかぁ……そうなのかぁ……。
まあでも幸せにな!」
津原くんはそう言うと自転車置場へと行った。
そして私たちは教室へと向かった。
その途中の廊下でも騒がれたのは言うまでもない…………。