好きな人に告白されました




「か、和くん!?帰ってなかったの!?」
『は?先に帰るわけねぇだろ。
中々帰ってこないから心配して電話かけた。』


「和くん……ありがとう!
雑草抜きを頼まれてました!終わったからすぐ門行くね!」


『ちーちゃん……それを先に言えよ。
言ってくれたら手伝ってやるのに。』


やっぱり和くんは優しいな。


なんて思いながら。
「ごめんね、ありがとう。じゃあ向かいます!」


とお礼を言って電話を切る。


和くんの声も聞いてもっと安心感が増した気がする。


さっきの感じた恐怖がまた少し、薄れた気がした。





悠河くんの方をみるとまだ電話をしていた。


「うん。うん。わかったから、ちゃんと帰りに寄るって。」


そう言って彼も電話を切った。
そして私の方を見る。


「【和くん】から?」
「なっ……なんでそれを……!」
「聞こえてた。幸せそうだね。」


羨ましそうな、切なそうな……なんともいえない表情をしていた悠河くん。


「………悠河くんは誰からだったの?」


何気なく聞いてみると、彼から予想外の答えが返ってきた。


「…………俺はね、婚約者からの電話だよ。
帰りに寄れってさ。じゃあ俺は行くよ。」


私がその言葉を理解する前に彼は歩きだす。


………今悠河くんはなんて言った……?


こ、こ、婚約者って……!?
もう一度悠河くんの方を見たときにはもう姿は見当たらなくて。


途中で曲がったんだと思う。


婚約者ってどういうこと!?
結婚相手………ってことだよね?





ていうか悠河くんにちゃんとお礼言えてないのに!


最後の最後にあんなこと言うから………


今度会ったときにお礼を言おうと思い、私も和くんの元へと向かう。


この時はわかっていなかった。
悠河くんの言葉の意味を。


この後に待ち受ける出来事に………。





次の日の終業式。
全学年、体育館へと集まっている途中だった。


「はぁ!?あんたそれ本気で言ってる!?」
「ほ、本気だよ……?」


「ありえない!あの深山(ふかやま)先輩に会ったなんて……!どこで?」



悠河くんのことを話したら麻里にすっごく驚かれていた。


悠河くんってそんな有名なんだ。


まあ校則の厳しい学校だから髪染めちゃいけないのに金髪だもんね。


顔も整ってたし。


「どこで会ったの!?
深山先輩はね、学校の授業は何回もサボってるのに学年トップというすごい人なのよ!その上家もお金持ち。


だけどすぐにいなくなるからほとんどの人が話したこともないって噂なのよ?」


えぇぇ!?
そんな噂が流れているの!?


「そんなの知らなかった。」


「あんたは橋本しか目がなかったからね。


みんな深山先輩のこともかっこいいって言うけど金髪だしサボリ魔で性格もわからないから見つけても誰も近づけないらしいよ。」


確かに金髪ってだけで怖いって思う人も少なくないよね。


だけどいい人だったけどなぁ……。




「それで?深山先輩のこと悠河くん、なんて呼んでるってことは………進展したの?


こりゃ橋本にライバル出現か?」


「…………百田さん、その話詳しく聞かせてくれないかな?」


近くに和くんと津原くんがいて、私たちの話を聞いていたようだ。


…………って、和くん、目が笑ってないですよ……?


「違うよ橋本くん!誤解だから」
「千紗が深山先輩と仲良くなっちゃってんのよ。もう下呼びなんだよ?怪しいと思わない?」


麻里はどっちの味方なの!?


「ふぅん。中山さんってそんな簡単に浮気しちゃう人だったのか………」


「だから違うってば!
悠河くんとは小学校の時仲良くて!」
「そうそう、だから大丈夫。それに俺もう婚約者いるし。」


「そうだよ!だから私は橋本くんだけ………………え?」


今、確かに悠河くんの声が聞こえなかったか?




すると急に周りが騒ぎだす。


「あれって深山先輩じゃない?」
「うそっ!かっこいい!」


「なんで2年のところにいるんだ?」
「初めて近くで見た。」


私も恐る恐る声のした方を向くと……


「おはよう、千紗ちゃん。昨日ぶりだね。」


目立つ金髪に今日はピアスもつけていた悠河くんがいた。


「な、なんでここにいるんですか!?」
「今日はなんだか終業式来たかったからここにいるんだよ。」


「そうですか………って、じゃあいつもは来ないんですか?」
「そうだよ。面倒くさいもん。」


相変わらず無気力そうな雰囲気を感じる。


「それで、お前が噂の和くんか。」
突然ニヤッと笑って和くんを見た悠河くん。


「そうです。橋本和也って言います。
あなたが深山先輩ですね。」


爽やかスマイル、表の顔で話す和くん。
だけどオーラが怖い。


「そっか。君が千紗ちゃんを独占したんだね。」


ど、独占って……他に言い方はないの!?






「まあそうですね。
深山先輩と中山さんはどういう仲なんですか?」


そう和くんが言うと、悠河くんは目を見開いて驚いた顔をした。


「君………もうちーちゃんって呼んでないの?」


その言葉に4人は固まった。
いや、逆になんでその呼び方を知ってるの!?


「なんでそれを……?」


「だって千紗ちゃんさっきも言ってたじゃん。小学校の時仲良かったって。


俺、最初千紗ちゃんじゃなくてちーちゃんって呼ぼうとしたの。


そしたら『それは和くんだけしか呼んじゃダメ』って言われたからやめたのに。
君がその和くんでしょ?」


その話を聞いていた周りがまた騒ぎだす。


「小学校の時……?」
「あの3人ってどういう関係なの……?」
「橋本くんってあの子と幼なじみ、とか?」


このまま話してたら周りにバレる上に変な誤解も招くかもしれない。


どうやって止めようかと悩んでいたら、
「2人とももう終業式始りますよ!」
と津原くんが2人の間に入って助けてくれた。


「じゃあ俺は3年のところに戻ろうかな。
また今度、どこかで会えたらね。橋本と……ちーちゃん。」


明らかにちーちゃんの部分を強調していた悠河くんはもう背中を向けて歩き始めていた。





「中山さん。」


和くんが私の名前を呼んだ。


「なんでしょうか………?」
「今日の帰り、2人の関係を詳しく聞かせてね。」


これは相当怒っている。


でもバレないように王子様を演じているんだけど………


今言った言葉の意味を訳すと
『2人はどういう関係なんだよ、ただで済むと思うなよ?』ということだろう。


恐怖でしかない。


だから私は、今日の帰りが怖くて仕方なかった………。





ーーその日は終業式だけだからすぐに終わった。


「じゃあね、千紗。
夏休みだけど講習だから明日からも会うけどね。」


………そうなのだ。


せっかくの夏休みなのに明日からも講習があるからほとんどいつもと変わらない。


「本当に講習やだなぁ。」


なんて言うけれど、それよりも今日和くんと帰る方が嫌だ。


隠してたわけじゃないんだけどな……。


「ま、頑張れ千紗。
私は和くんと結婚したいから、って言っときなよ。」


「……そ、それは恥ずかしくて言えない!」
「だってさ橋本。恥ずかしいけど結婚したいってことは否定しなかったよ。」


「うん、全部聞いてたよ。中山さん帰る準備できた?」


聞かれてた、なんて………!


しかも私はこんなにも恥ずかしいっていうのに和くんは簡単にスルーしたよね?