「お前、今日一段と様子がおかしい。」
登校中。
早速橋本くんに様子がおかしいと指摘される。
そんなの当たり前だよ。
和くんがこんなに容姿が変わってるし(いい意味で)、だけど間違いなく橋本くんが和くんだったのだ。
急にそれをわかってしまったのに今更仲良くしろとか無理だよね。
それに変に意識してしまう。
橋本くんが私の初恋の相手だった、ってことだよね。
ていうか私は和くんの容姿や性格がどれだけ変わろうと彼しか好きになれないみたい。
「いや、なんでもないよ?」
平静を装うけど、腑に落ちない様子の橋本くん。
私だって聞きたい。
どうして言ってくれなかったのか、とか。
ちーちゃんって呼んでほしい。
今はお前呼ばわりなんだもん、嫌に決まってるよ(たまに千紗呼びになるけど)。
そういえば、和くんは転校してる間に彼女っていたことあるのかな。
………なんてモテるからいて当然だよね。
自分で考えときながら傷つくって、私なにやってんの……?
「ねぇ橋本くん。」
「何?」
「今までいた彼女ってどんなタイプなの?」
「は?なんでいたって決めつけるんだよ。」
「え?だってこんなイケメンさんなんだからモテるでしょ?」
「モテるからって彼女いるわけじゃねぇし。
俺はつくる理由がなかったしほしいとも思ったことないからいたことないけど?」
その言葉には安心………というより素直に驚いた私。
「えぇ!?それ本当!?」
「だったらなんだよ。お前もだろ。」
「そ、そうだけど……。」
私はこの顔だもん。
いなくて当たり前だよ。
まさか和くん、いたことないなんて……!
それは私にとったら嬉しいことだな。
自然と頬が緩んでしまう。
「何ニヤニヤしてんだよ。」
って和くんに睨まれたけど気にしない。
いつか転校してる間の話も聞きたいな。
なんて思いながら。
さっきまでのモヤモヤが一瞬でなくなるという私は単純人間だ。
でも和くんも私が初恋人なのだ。
そんなの喜んじゃうに決まってる!
元気を取り戻した私はその日一日中上機嫌だった………。
それから時は経ち、1回目のテストも終わり梅雨入り中の7月に突入していた。
「ではそろそろ9月の文化祭のことで話し合いたいと思います。」
今はロングホームルームの時間。
九月に行われる文化祭のための話し合い中。
ここの文化祭はまあまあ規模が大きく、準備はいつも7月から始めるのだ。
「よしゃあ!全力で1位取りに行こうぜ!」
文化祭担当の委員があるのだが、男子はムードメーカー的存在の津原くんが担当している。
そして女子はというと………
「本気で1位を狙いたいなら私を選ぶべきじゃなかった!」
「おい百田、いつまでも文句言うなって。」
麻里がやることになった。
津原くんは自分で立候補したが、その時に「女子は百田で!」と指名したのだ。
2人はまだ付き合ってはいないものの、だいぶいい感じだ。
だって結局麻里は文句を言いながらも委員会をやることに了承したのだから。
「それに1位とれるに決まってるだろ。
なんせ俺らのクラスには学校一イケメンという橋本和也がいるのだからな!去年も1位だったし。」
津原くんはドヤ顔で言うけれど、和くんのおかげなんだよね?
「やっぱり和也を目立たせたら勝ちだろ。」
津原くんはそう言うけれど、和くんはどうも乗り気じゃなさそうだ。
だけどみんなも和くん頼みで、
「去年の橋本くんって執事の服だったよね。」
「断トツで目立ってたよな!すっごいイケメンだったし。」
「今年も楽しみ!」
と口々に話していた。
……そうなのだ、去年は和くんのクラスはメイド執事喫茶で、圧倒的人気を誇っていた。
他校の人も一般の人たちも老若男女問わず断トツで1番だった。
私は和くんを一目みたけれど、1番輝いていてすごくかっこよかった。
「今年はどうする?
去年は執事だったからなあ……」
「まあ橋本なら何着てもかっこよく見えるしなんでもいいんじゃない?」
「和也はいいとして、他の男子が似合うかわかんねぇじゃん?」
「そっか。あんたとか特にね。」
「お前は一言余計だ!」
………あのー、そんなみんなの前でイチャイチャしないでもらえるかな?
ていうか早く付き合ったらいいのに。
「あ、じゃあさフォトスタジオとかは?
橋本のツーショット付きで。どう?すっごい人気になるよ。」
「ああ、それありだな。
この際クラスの奴らとツーショット撮りたい人は指名したら一緒に撮れる、みたいな感じにしようぜ。」
「それいいね。あとはSNSに載せてもらうために可愛い感じにしないと。」
…………言い合っていたかと思えばいきなり意気投合して勝手に話を進めてる。
仲がいいのか悪いのか。
「じゃあフォトスタジオでいいか?
中山、文化祭の日だけは1位取るために和也を貸してくれ。」
「……え?そんなの橋本くんに聞いた方がいいんじゃ」
「いいや、中山の許可だけでいい。」
「そうなの?私は別にいいけど……」
1位を取るためだもんね。
女子に和くんが囲まれるのかぁ。
嫌だけどその日ばかりは我慢しよう。
そして私たちのクラスはフォトスタジオに決定した。
ーー次の日の放課後から準備が始められた。
昨日の放課後に何人かの男子たちが買い出しに行ってくれ、必要なものはいくつか揃っていた。
私と麻里は残って手伝っていた。
もちろん和くんも津原くんも。
「あー、なんで私ってあいつの前になると口調がきつくなるんだろ。」
「あいつって津原くん?」
「そう。」
「そういえば昨日一緒に買い出し行ったんだっけ。」
「……うん、行った。」
なるほど、その時に何かあったのか。
「なんとなく想像できたかも。」
2人の言い合ってる姿が頭に浮かんだ。
「でしょ?絶対こんな気の強い女って嫌だよね……」
珍しくネガティブな麻里だ。
「そんなことないと思うけどな。
嫌なら文化祭の委員会一緒にやったり買い出し行ったりしないだろうし……」
それに津原くんを見てたらわかる。
麻里のことが好きなんだなぁって。
「そうかなぁ。」
「そうだよ。だから元気出して!」
「……なんだか千紗が頼もしく見える。
よしっ、頑張ろう。じゃあ作業進めよか。」
「そうだね!あ、ちょっとペンキ取ってくるや。」
そう言って私は立ち上がって、ペンキを塗る作業をしようと思い、教卓の上に置かれたペンキを取りに行った。