「あのさ、俺だって男なんだけど」
「え?うん、知ってるよ?」

なぜそんな当たり前のことを聞いてくるのだと言わんばかりに無邪気に笑う凛子は、いとも簡単に俺の中をかき乱す。

…あぁ、もう。
ここまで男として見られてないと、さすがになんか…ムカつく。

「男って…こういうことなんだけど」
凛子の手首を掴んで自分の方に引き寄せる。そしてそのままソファの上に組み敷いた。

「こ、うちゃん…?」
「凛子お前、今自分がどんな顔してるかわかってる?」
「どんな顔って…」
「今すぐ抱きたくなるような男を煽る顔」

これからの出来事を予告するかのように、凛子の唇を指先でなぞっていく。

「好きな女にこんな顔見せられて我慢できるほど、俺人間出来てないから」
目を見開いたままの凛子に、ゆっくりと顔を近付けていく。

そうして少しでも動いたら触れそうな距離まで近付いたとき…彼女の肩がびくっと揺れた。

「…冗談だよ」

ははっと笑いながらその場をごまかすようにそんな言葉を吐き捨てて、身体を起こしていく。
あからさまに凛子に否定される前に、自分から。

「本気にすんなよ?今日はエイプリルフールだからなー」
目に入った机の上にあるカレンダーの日付を見て咄嗟に思い浮かんだそんな言い訳を、あたかも余裕ぶって並べていった。