渋々訂正してから、陽気に声を掛けてきた男子生徒を見やる。
彼は「そうなん? わりーわりー」と臆せず手を合わせて、俺の隣に並んだ。

こいつは確か――そうだ、津山だ。
中学の頃、一年と二年で同じクラスになったが、あまり話したことはない。常にどこか一歩引いたように周囲を見渡していて、騒ぐのは得意ではなさそうな印象だった。

すぐに反応できなかったのは、最後に見た彼と現在の彼の身なりがあまりにもかけ離れていたからだ。
真っ黒だったはずの髪はキャラメル色に染められていて、耳朶には小さなピアスが二つずつ開いていた。


「誰かと思った。お前そういうタイプだっけ」

「えー……まあ、うん」


歯切れ悪く受け応える彼に、それ以上の追究をやめた。
消化しきれない何かを抱えているような気がして、それが今の自分と酷く似ている。

津山とつるんでいてまず後悔したのは、面倒ごとが多いということだ。
派手な見た目のせいか、彼はよく柄の悪い連中に絡まれる。そのくせ中身はくそ真面目だから、いつも怯えたように固まってしまうのだ。


「だ、だから、狼谷は関係ないんで、殴るなら俺だけにして下さい」