こちらに伸ばそうとして引っ込めた彼女の手を、咄嗟に掴んだ。
嫌なわけがない。彼女から与えられるものなら何だって欲しい。

馬鹿正直に俺の理性がもたないから、と申告するのは気が引ける。そもそも、羊ちゃんはこの行為をそういうものと結び付けて考えていなさそうだ。

伝えあぐねていると、彼女の手がそっと俺の肩を押した。


「いつもしてもらってばっかりなので……えっと、痛かったら言ってね、なるべく優しくします」

「……羊ちゃん、」

「狼谷くん、しゃがんで?」


ちょっと待って欲しい。そのセリフは絶対に俺が言うべきだった気がする。
羊ちゃんは時々予想を突き抜けて、俺よりも男前なことをするから困るのだ。

結局、彼女の前では抵抗も防御も意味がない。
少し照れ臭そうに微笑む様にあっさり陥落して、俺は自身の首を彼女に差し出した。

羊ちゃんの髪がふわりと近づいてきて、自然なシャンプーの香りにすら酔いそうになる。
しかしそんな呑気なことを考えていられたのは、そこまでだった。

彼女が優しく俺の首筋にキスをする。瞬間、体中がかっと熱くなって、耐え切れずに目を瞑った。


「ん、」