「羊ちゃん、いい?」

「うん……」


おずおずと彼女が頷いたのを確認してから、俺は努めて優しく、その白い首筋に舌を這わせる。
消えかかっている痕の上から口をすぼめて吸い付けば、華奢な肩が揺れた。


「……ん、ついたよ。ありがと」


火照って赤くなった可愛らしい頬にキスを落とし、彼女を甘やかす。
そのまま少しきつく抱きつくと、羊ちゃんは躊躇いながらも俺の背中に腕を回してくれた。

幸せだ、と噛み締めながらも、彼女を騙している自分にやるせなくなる。

羊ちゃんの首に絆創膏が貼られているのを見てから、完全に味をしめてしまった。
まさかとは思ったが、俺の言葉を鵜呑みにした彼女は、今日も「消えてる? 大丈夫?」と不安そうに問うてきて。正直、ぐらっときた。

週に一回、委員会の後。
誰もいなくなった教室で、彼女にこうして独占欲を押し付けるのが習慣になってしまった。

毎朝彼女と登校していることもあり、今や校内で俺たちの仲を知らない者はほとんどいないだろう。だからこそ、ぎりぎりワイシャツの襟に隠れる場所でとどめている。

近づいて上から覗けば見えるが、他の男にそんな距離感は許さない。もし仮に怖いもの知らずな馬鹿がいれば、この痕を見て身を引くだろう。俺が頑なにこの位置を譲らないのは、そんな牽制のためだった。


「あの、狼谷くん」