「早くここまで来てよ。俺と一緒に堕ちて……」

「ひぁ、う……」


羊ちゃんも俺と同じくらい、もう這い上がれないくらい溺れてよ。
退路を全て絶ってしまいたい。他の道に行こうだなんて、一瞬でもそんな迷いが生まれないぐらいに縛り付けてしまいたい。

でも、そんなのは強欲だって分かっているから。
無理やり奪ったところで、絶望に揺れる彼女を眺めることになるだけなのは痛いほど実感している。

ささやかな所有印を刻む程度で何とか思いとどまり、必死に理性を保つ。

焦るな。今はゆっくり慣らしていって、彼女の意志で俺を欲しがってくれるその日まで耐えろ。少しずつ、まっさらな彼女に俺を教え込んで、心地いいことなんだと暗示をかけることは忘れずに。


「羊ちゃんだけだよ。もう一生、羊ちゃんだけ」


思い描く未来のその先に、彼女がいないなんてもう考えられない。
戸惑ったように視線を左右に振る羊ちゃんの腰を抱き、半ば強引に将来の保証を迫る。

羊ちゃん、簡単に好きなんて言っちゃだめだよ。もちろん嘘だなんて思ってないけど、俺にそんなことを言ったら最後、全部隅々まで食べられちゃうから。


「ずっと一緒だよ。もう絶対、逃がさないから」


早くこの薬指に、俺のだという証をはめ込みたい。