「ちょ、ちょっと待って……みんな早すぎるよ……!」


みっともなく壁にもたれながら、私はこれまたみっともない声で追い縋る。


「ごめん羊、ちょっと軽く一周してくるわ」

「カナちゃん〜〜〜!」


すいすいと身軽に滑っていくみんなの背中を、亀並みのスピードで進みながら恨めしげに見つめた。

結局、定番のローラースケートで完全に私はつまづいている。これが一番苦手だ。毎回怖くて壁から手が離せない。
今日こそ少し勇気を出そうかな、とリンクに入ってはみたけれど、やっぱり無理はものは無理だった。

滑る、というよりも歩く、というのが正しい。そんな進み方をしていると、背後からとんとんと肩をたたかれた。


「羊ちゃん、大丈夫?」

「狼谷くん……!」


そういえば今日彼と話すのはこれが初めてだ。あんなに意識してしまっていたけれど、今は足元に必死で逆にそんなことを気にする余裕がない。


「一緒に滑る? 引っ張ってあげるよ」


狼谷くんもローラースケートなんてやるのか、と頭の片隅で考えていると、彼が言いつつ私の腕を軽く引いた。


「えっ……! や、待って! だめ、怖いからやだっ!」