クラスのみんなとは現地集合で、私とカナちゃんがお店に辿り着いた頃には、半分以上の人数が集まっていた。
その顔ぶれを眺めていると、唐突に後ろから背中をつつかれる。
「つーくーもーさんっ」
「わっ、九栗さん! びっくりしたあ」
ごめんごめん、と愉快そうに軽く手を合わせた彼女につられて、こちらも頬が緩む。
九栗さんは朗らかな笑顔を浮かべたまま、ほんの少し意地悪な口調で私をからかった。
「狼谷くんならまだ来てないよ〜。いま探してたでしょ?」
「えっ!?」
彼女は冗談のつもりだったのかもしれないけれど、あながち間違っていなくて焦る。無意識のうちに彼を見つけようとしている自分がいたことは確かだ。
「っていうか、二人で来るのかなーって思ってたよ。あれだけ毎朝一緒に登校してくるのに」
心底不思議そうに首を傾げた九栗さんに、カナちゃんが口を開く。
「まだ遠慮してるんだと思うよー。狼谷くん、何よりも羊に嫌われることが怖いからねきっと」
まさかの回答に、九栗さんよりも私が驚いてしまった。カナちゃんの分析力がすごい。
狼谷くんは基本的に物凄く優しくて、いつも私を気遣ってくれる。時々、本当に時々、押しが強いんだけれど。経験値皆無な私を尊重してくれているのだと思う。
「あ、ほら。噂をすれば」