頭を垂れる狼谷くん。
確かに噂されちゃうかもしれないけれど、その時はその時だ。ちゃんと否定すればいいし、時間が経てば薄れていくだろう。
「あー、焦った……びっくりしてちゃんと否定できなかった。ごめん羊ちゃん……」
「ううん! 私も何も言えなくてごめんね……!」
狼谷くんも焦ってたのかあ……!
急いだり慌てたりするところはあんまり見ないから珍しい。
「ええっと……狼谷くん、わたあめあるよ! 食べる? あっ、甘いものそこまで好きじゃないんだもんね、えーと……」
落ち込んだままの彼を何とか励まそうと、右へ左へ頭を振る。
あちこちに屋台が出ていて、いつの間にかすっかり辺りは暗い。
「あ、焼きそば! たこ焼きもあるよ! 私買ってくるね!」
今あんまり混んでないみたいだし、すぐに買えそう。
駆け出そうとした私の腕を、狼谷くんが掴んだ。
「だめ、はぐれちゃうよ。一緒に行こ」
「ええ……すぐそこだよ?」
「やっぱり手繋いでもいい? はぐれたら困る。知り合い見つけたらすぐ離すから」
言いつつ彼が私の指先に触れる。
「う、うん……分かった……」