女の子が一人、こちらを向いた。
ばちりと目が合って、反射的に足が止まる。


「白さん?」

「え、あ――」


名前を出されては逃れようがない。
他の子も「どうしたの?」「あ、白さんだー!」と口々に気が付いたようで声を上げる。


「……と、狼谷くん?」


私の隣に視線をずらした女の子は、目を見開いた。
その目がそろそろと私たちの間の空間を捉えて、たちまち表情に驚きの色が滲む。

わっ、そうだ! 狼谷くんと手繋いだままだ!


「あっ、えっと、これはその……!」


焦って上手く言葉が出てこない。
なんて言えば穏便に誤解を解けるんだろう!? ああいやでも、慌てて変なこと言っちゃうよりは狼谷くんに任せた方がいいのかな!?


「わ〜そっか〜、二人って付き合ってたんだね〜!」

「びっくりしたぁ、意外だったよー!」


きゃあ、と沸き立つ女の子たちに、私は思わず狼谷くんを見上げた。
どんな困った顔をしているんだろうという興味半分、助けて欲しいという期待半分。

それなのに。


「……はは、みんな元気だね」