「カズヤ先生、待ってください!」

出て行こうとするのをあたしは引き留めた。
ユウジがいるのに。
気づかれるかもしれないけど、かまわなかった。

もう、カズヤ先生は学校からいなくなってしまう。
大学に戻ってしまう。
もし彼女が大学にいるのなら、彼女のいる世界に戻っちゃったら、この学校のことなんか忘れちゃうかもしれない。

あたしのことを、忘れちゃうかもしれない―――。

あたしは先生の腕を引っ張って、人気のない廊下に向かった。
先生は、何も言わずあたしに引っ張られるまま。
大人だから、気づいてるのかもしれないな。
でも、こうなった以上、あたしはもう引き下がるつもりはなかった。