「先生！」

授業が終わって、あたしは職員室へ向かうカズヤ先生を追いかけた。
先生はいつものようににっこり微笑んで、

「どうしたの」

と言う。

ドキドキするのは、走って来たせいじゃない。
分かってる。
あたしは、カズヤ先生のことが、好きなんだ…！

「ありがとうございました！」

勢いよく頭を下げた。
先生はびっくりしたように眼を丸くしている。

「ああ、ノートのこと？　なんで？　そんな、俺、感謝されるようなこと言ったっけ」
「人に褒められたり、いいことをしたって紹介してもらえたの、初めてだったんです」
「そうなんだ」

先生は笑ってばかりだ。
たかだか一週間ぐらいだし、あたしはそんなにカズヤ先生のこと知ってるわけじゃない。
だけど、多分ほとんど笑ってるんだろうなと思う。