「西高受けない?」

歩いていた足を止めて、あたしの顔をじっと見る。

「どうして? あたし、楽したいから付属に行きたいんだけど」

あたしはドキドキしていた。
コウキがこんな顔をするのは初めてだった。
ちょっとゴツゴツした手とか、肩幅が広いのとか、剃りきれてないヒゲとか、そんなのが目の前にある。

「アヤが応援してくれたら、勇気100倍だもん」
「違う学校でも応援するよ。コウキが出る試合は、見に行ってあげる」
「近くにいてほしいんだ」

続きの言葉が、なんとなく分かる気がした。
でも、こんなに家がたくさんあって、いつ家の人が出入りするか分からない。
そんな状況だからか、あたしは一層緊張していた。

「アヤ、好きなんだ」

あたしは、うなずいてしまった。