彩―IRODORI―

「コウキ。あたしはあんたのこと、好きだよ。
　愛してるかって聞かれたら、愛してるって自信もって言える」
「どうしたんだよ、アヤ」

コウキは笑った。
でも、目が笑ってない。
目は、戸惑ってるようだ。

「コウキ。たぶん、あんたもあたしのこと、好きなんでしょ？
　愛してるんでしょ？」
「もちろんだろ。だからいつも電話してるし、メールだって…」
「うん、分かってる」

あたしは息を吐いた。
心臓がバクバクしてる。

「でも、コウキにはもう一人、好きな人いるんでしょ？」

そう言ったら、コウキの目が泳いだ。
何か言おうと、口を動かしてるけど、言葉にならない。

「あたし、別に佐々倉さんのこと、憎いと思わないんだ。
　コウキが好きになっちゃったのはしょうがないし、
　佐々倉さんがコウキのこと好きになるの、分かる気がするから」

言ってるうちに、ワケが分かんなくなってきた。
あたし、ホントにコウキのこと愛してるんだろうか。
こういうとき、もっと嫉妬するもんじゃないだろうか。

コウキは驚いたような、申し訳なさそうな、切なそうな、複雑な顔をしていた。