コウキからの返事はなかった。
もう部活の準備を始めていたのかもしれない。
返事がなくても、あたしは待つと決めていた。

グラウンドの片隅で、野球部の練習を見守る。

あたしがいることに、気づいてほしいと視線を送った。
でも、コウキはあたしに気づかなかった。

ほかに何人もいるのに、あたしはコウキだけを見ていた。

甲子園に行きたいと言っていたコウキ。
プロ野球選手になりたいけど、それは難しくて、と熱く語ったコウキ。
才能はある、と言われていたコウキ。

練習が終わって、グラウンド整備をして部室に入った一年生たちを追って、あたしは部室の近くまで行った。