コウキは、あたしに気づかない。
当たり前だ。
校門に向かっていると、あたしに背を向けることになる。

コウキはあたしに気づかず、別の誰かには気がついた。

「マイ!」

コウキは叫んだ。
もしかしたら、自分の後ろに誰かいるかもしれないのに。
野球部の仲間がいるかもしれないのに。
彼女のあたしがいるかもしれないのに。

レイカの言葉がよみがえる。

『竹下クンと同じクラスに、佐々倉マイってコがいるの』

ああ、このコなんだ。
この子が、コウキと噂になってるコ。
逆光のせいで、あたしは相手がよく見えなかった。

「コウキ」

顔は見えなかったけど、その声を聞いて確信した。

このコ、コウキのことが好きなんだ―――。