「あたしだって、本当は二股がいいなんて思っちゃいないよ」

マリが言った。

そうか。
マリも片思いの人がいたんだ。
タイシ君と別れたのは、タイシ君をこれ以上傷つけないようにするため、だったのかもしれない。
そう、思いたい。

「わかった。会うよ。でも、あたしはユウジと別れるつもりないから」
「本当? いいの?」
「うん」
「ありがとう」

あたしが言ったことだ。
あたしが責任を取らなきゃ。
ユウジを傷つけ、今度はチャコに冷たい目で見られるかもしれないことを、覚悟しなくちゃいけない。

でも、あたしがタイシ君と会おうと思ったのは、タイシ君も失恋したばかりだから。
傷をなめ合おうなんて思ってない。
ただ、この気持ちを理解できる人と、話がしたかったんだ。

あたしは、やっぱりまだカズヤ先生のことが少し残ってるらしい。