「ホント? 西高受けるの?」

コウキはどんぐりみたいな目をまん丸にして喜んでくれた。
コウキは模擬試験の結果、どうだったんだろう。
なんとなく聞かない方がいいかな。

「うん、だから、絶対一緒に合格しようね」
「おう! 引退したら絶対勉強に集中するんだ」

なんだか頼もしかった。
でも、「引退したら」ってことは、やっぱりちゃんと勉強してないんだ。
少し不安になった。
西高は、そんなに簡単に入れる学校じゃない、って有名だから。

「今からちゃんと勉強しといてよ。やーよ、あたしだけ受かるなんて」

あたしが、口をぶーっと尖らせると、

「じゃ、アヤから励ましてもらおうっと」

とコウキが笑った。
あたしは何のことか分からなくてきょとんとしていると、コウキの顔が降ってきた。

「ありがと」

間違いなく、コウキの唇があたしの唇に触れた。
ちょっとかさついたコウキの唇だけど、あたたかかった。

それが、あたしの初めてのキス。

もうちょっとロマンチックなのが良かったけど、コウキらしいね。
あたしは、指でそっと自分の唇をなぞった。