目が覚めた。
カーテンを閉めた俺の部屋。
土曜日の昼頃、空は雲ひとつない青空。

「夢だったのか…?」
ならさ、お前が出てこいよ、美来。
俺が会いたいのは、お前なんだから。
知ってるだろ―?

神様は、意地悪なんだよな。


「大和ー?起きたんならミルクの散歩行ってきてー」
階下から母さんの声が聞こえてきた。
ミルクは、5年前にうちに来た黄色がかった白色の犬だ。もともとうちには、コーヒーという名前の真っ黒い犬がいた。
俺は、コーヒーで、別れの辛さを知った。それが、好きの大きさに比例することも。
だから、ミルクを飼うのには反対したんだ。けど、永久がきかなかった。
まさか、永久の方が先に逝くとは思わなかった。
なあ、永久。やっぱり、神様なんていないって思いたいよ。じゃないと、辛い。


『なあなあ!大和はさ、神様っていると思う?』
『いるわけないだろ、お前、そんなん信じてのかよ?』
『え、だっていないとさ、コーヒー幸せにやっていけないじゃん』
『…コーヒーなら、どこでも幸せでやっていけるよ』
『そうかなあ。でもさ、一世一代の選択があったとして、どっちかを選んだらやり直すなんてできないだろ?で、そこで会う人がこれからの大切な人になってくかもしれないんだよ?』
そう考えるとすごいよな、と永久は笑った。


でもさ、永久。そしたら、お前がいなくなったのにも、理由があるのか?俺は、そんなこと思ってない。お前を失ってまで手に入れるものなんて、いらない。

そんなもの、きっとこの世界には存在しない。