聞き覚えのある曲が流れている、小洒落た雰囲気のある喫茶店。
俺の目の前には、美来にそっくりな人がいる。アイスティーを頼んで、飲まずにずっと下を向いている。
話しかける最初の言葉が分からない。

「あの、」
彼女が口を開いた。
「あの、なんで…」
彼女も戸惑っているようだった。
やがて、意を決したように顔を上げる。
「信じてもらえないかも知れませんが、聞いてほしいことがあるんです」
俺は、確信した。
この人は、俺と同じような悩みがあると。

「私、彼氏がいたんです。でも、彼は亡くなってしまいました。…あの、不快かもしれないですが、私の彼は、…」
一回言葉を切った彼女を、真っ直ぐ見る。
「あなたにそっくりなんです」
やっぱり―。
「実は、俺も、一緒なんです」
彼女は、驚いた顔をして、微笑んだ。