「はあ...何がダメだったのかな...」
ため息をつき却下された絵本の試作品を読み返す。
最近はいくつか試作品になるものはあった。
しかしそこから出版にいたるものはなかった。
「良子ちゃん、これ」
といきなり同僚の女の子が私の机に一通の手紙を置いた。
「何よこれ」
「私からのラブレター。最近落ち込んでるみたいだから」
「げっ、ラブレター...?しかも落ち込んでないし!」
「そっ。まあ強がらないことも大切よ、じゃ」
「なによそれ...」
呆れた...
あ、それより手紙...
手紙は誰宛てのものなのか、誰からの手紙なのか書かれていなかった。
じゃあなんであいつが...
よく見ると手紙のふうが空いている。
「あいつ読んだわね、でもなんで私宛てだって...」
手紙を手に取り、ひらいてみる。
『こんにちは。
いきなりお手紙を書いてしまい申し訳ありません。
私は昔、とある病院に入院していました。
そこで白雪姫という女の子に絵本を読んでもらっていたことがありました。
その時、彼女の読んでいた絵本は綺麗で、とても温かくて憧れていました。
でも最近はそんな絵本がなく、年下の子たちに読んであげることができないでいます。
そこでそんな絵本を出して欲しいと思いお手紙を書かせていただきました。』
え...
白雪姫って、結姫のこと...だよね..
この手紙を書いてくれた子はあの時入院してた子ってことよね?
嬉しい。
結姫のことを覚えてくれている人が私たちの他にもいた。
涙が出そうになる。
でも今は手紙を書いてくれた子の気持ちに応えなきゃ。
デスクに向かう。
あっ
見ると同僚の子が私の方を見て笑っていた。
あの子には結姫の話をした。
だから手紙が私宛てだとわかったのだろう。
「ありがと」
「いえいえ」
そう言うと再び絵本について考える。
お話は何にしよう...