「これが新しい台本です」
と監督は私に台本を差し出した。
「白雪姫...」
どんな話なのだろう...
ページを開きゆっくりと一行ずつ読んでいく。
えっ...
私は最初の1ページを読み終えハッとした。
この物語の主人公、私の演じる白雪姫はとある病院に入院する少女。
彼女は毎日子どもたちに絵本を読んでいる...
まるで結姫の物語のようだった。
私は一気に読んでしまった。
途中までは結姫の物語と同じだった。
しかし、後半は全く違うものだった。
なぜなら白雪姫は王子様のキスで目覚め、最後には王子様と結婚する。
というものだった。
涙が止まらなかった。
「凛子さん?」
監督の声に私は我に返った。
「いいえ、なんでもありません」
「これは僕が病院に入院している時に出会った女の子の話なんです」
と脚本家の方が言った。
「え?」
「彼女は白雪姫と呼ばれ、いつも絵本を読み聞かせをしていました。彼女はとても綺麗でした」
やっぱり結姫のことだ...
「しかし、彼女は亡くなってしまいました。彼女には王子様と呼ばれる恋人がいましたが彼を置いていってしまったのです」
そう...
「だから僕は彼女の存在を世の中に知ってもらいたいと思いこの脚本を書きました」
その言葉が嬉しかった。
「それに、せめて僕の脚本の中では王子様と幸せになって欲しいと思ったんです」
と優しく脚本家の方は笑った。
運命だと思った。
本当は演じることに不安もあった。
私は結姫を演じていい人間なのか、演じることができるのかずっと悩んでいた。
でも結姫の仲間として、友だちとして彼女のことをたくさんの人に知ってもらいたいと思った。
「素敵なお話ですね、白雪姫全力で演じさせていただきます!」
結姫...私きっと演じきってみせるよ。