「はい」


「…ありがと」




嫌がる凪を連れて来たのはそこそこ有名なクレープ屋。


イチゴの乗ったクレープを渡すとまだ不機嫌な顔を残すも素直に受け取る凪。




「…悠は食べないの?」


「うん、甘ったるくていつも全部食べれないから」


「ふーん」


「凪は全部食べれる?」


「わかんない」


「甘いの好き?」


「うん」


「美味しい?」


「…うん」


「はは、可愛…」




自然と出た言葉に咄嗟に口を閉じる。


あまりにも自然に口にしてしまい、自分でも焦る。




「…ねぇ、もうお腹いっぱいなんだけど」


「ん?あぁ、貸して?そのくらいなら俺食べれるから」




3分の1程残ったクレープを凪から受け取り口に入れる。


甘…




「…ッ/////」




凪は真っ赤な顔をしてこっちをジッと見ている。




「なに、どうしたの?」


「…なんでもないッ!!!!」




プイッとそっぽを向く凪。


ツインテールがふわりと大きく揺れる。




「もしかして、間接キスで照れてる?」


「別に、そんなんじゃないし…!」




今時間接キスでこんな反応するとか…


髪を結んでいるため、まる見えな凪の耳は真っ赤。




「凪ってピアス付けてないんだ」


「…え?うん、なんで?」


「付けてそうだったから、意外」


「…ピアスは付けたいけど、穴開けるの怖い…」




あまりに可愛い理由に自然と笑みが溢れる。




「ちょっと、笑わないでよ!悠は何個開けてるの?」




そう言って俺の耳を覗いてくる凪。




「右2つに左3つ…痛くなかった?」


「痛くはなかった」


「ほんと!?あたしも開けようかな…」


「凪はそのままがいいよ」


「え?」




俺は手を伸ばして凪の耳朶をふにっと触る。




「凪の耳朶厚いから結構痛いかも」


「…嘘、やだやめる絶対開けない!」




青ざめた凪を見て、ほんとは可愛い耳に穴開けるの勿体無いから、なんて理由は秘密にしておこうと思った。




「あ、悠!」


「あ、ほんとだ!なにしてんのー?」




突然かかる声。


声の方を見ると隣のクラスの女2人。




「あれ?ねぇ悠、香奈は?」




凪の存在に気づいた女は元カノの名前を出してくる。




「もう別れたよ」


「え、そうなの?」


「初知りなんだけど!」


「じゃああの子、今の彼女?」


「彼女ではないけど…」


「あ、そうなんだ!」


「なんだ、じゃあ今度私らとも遊んでね!」




そんなことを言って手を振っていった2人。