「いらっしゃいませ〜」




再び嫌がる凪を連れて来たのは大きなデパートの化粧品売り場。




「あっ、いつもありがとうございます〜」


「どうもー…」




見慣れた店員が俺の顔を見るとニコッと微笑み声を掛けてくる。




「なんで顔覚えられてるの?」


「付き添いで結構来てるから」


「…ふーん」




不機嫌な凪もデパコスには興味があるらしく、キョロキョロと店内を見始める。




「あ、新色のリップ出てる…」




キラキラとした中から1つ手に取る凪。




「その色凪に似合いそう」


「は…?」


「すいません、これテスターいいですか?」


「はい!こちらになります、どうぞ〜」


「え?ねぇ、ちょっと!!」




店員からそれを受け取って自分の親指に少し付ける。




「動くなよ?」




凪の顎を掬ってその唇にリップの付いた親指を軽く押し当てる。




「…ッ//////」




唇全体が色付き、艶めいたのを確認し、視線を上げると真っ赤な顔をした凪と目が合う。




「可愛い」




今度ははっきりとその言葉を口にしてしまった。




「やっぱり似合ってる」


「…ッ//////これ買います…!」


「ありがとうございます〜只今ご用意致しますね、少々お待ちください」


「買っちゃったじゃん!悠のばか!!チャラ男!女ったらし!!!」




店員が奥に消えていったのを確認してから凪はまだ赤い顔をしながらもそう睨みながら言う。




「もうほんとに帰るんだからね!!」


「急になに怒ってんの?どうした?」




凪の顔を覗き込み、頭に手を置く。




「こういうのにッ…怒ってるんだってば!!!!」


「は?」


「お待たせ致しました〜」




そこで店員が戻って来て凪は俺を無視してレジへと向かった。