それからだ。大と一緒にセッションをするようになったのは。
元々お兄ちゃんの影響でギターをやっていた大は、当然私よりも上手く、独学の私にいろいろ教えてくれた。
「……楽しかったな」
遠い記憶に思いを馳せ、ぽつりとこぼすように呟いたとき。
不意に、窓のサッシに手をついた明希ちゃんに、後ろから囲い込まれた。
そして覆いかぶさるように、私にもたれかかってくる。
甘い匂いと明希ちゃんの温もりが落ちてきて、背後に来ていたことに気づかなかった私の心臓が、突然のことに微かに揺れた。
「明希ちゃん?」
「俺、寒がりなんですよ」
「寒がり、なんですか?」
「そーです」
少しずつ、私と明希ちゃんの鼓動のテンポが重なっていく。
私の背に頬を当て、明希ちゃんがぽつりとつぶやいた。
「ヒロの背中、熱い」
「明希ちゃんの体が冷えてるんだよ」
視界が眩しいのは、窓の外の茂みが日の光に反射して、みずみずしい緑を輝かせているから。