──私と大は、幼稚園時代からの幼なじみ。


親同士が仲良いわけでもない。特別近所に住んでいるというわけでもない。

だけどなぜか、気づけば小さい頃から大は隣にいた。


大は口は悪いけど、心根はずっと変わらず優しくて。

どんな時も隣にいた私にいろんな景色を見せてくれた。


中学時代は、ふたりで軽音部に入部した。


軽音部と言っても、3年生も引退してからの部員はふたりだったから活動という活動もできず、ふたりで駅前や公園で路上ライブをしていた。


ふたりでギターを弾いて、私がボーカルも兼ねて。


大は私の歌声をよく褒めてくれた。

『未紘の歌声は、世界一だ』って。


私を褒める時、大は決まって、自分のことのように嬉しそうに細い目をさらに細めて笑ってくれた。


大に褒められる度、私は歌うことがさらに好きになった。

自分を好きになれない私の、唯一の誇りになった。


……だけど大が褒めてくれた歌声は、もう音符を奏でることを知らない。


──中学二年生の秋のあの日、私は歌う意味を失った。

心がパリンと悲痛な音を立てて割れて砕け散った、あの瞬間のことは今もよく覚えている。


それから、私と大のなにもかもが変わってしまったのだ。