どこからか漏れて聴こえてくるような音は、神経を向ければメロディーになっていることに気づいた。


「あ、この曲……」


導かれるように、眩しい光が差し込む窓に向かう。


そして少し錆びついた窓を開ければ、教室棟の方から校内放送が聞こえてきていた。


さっきよりも明確に音楽として輪郭を持ったそれは、たしかに聞き覚えのあるものだった。


「知ってるの? この曲」


「大が好きな曲なの」


ここまで校内放送が聞こえてくるとは思っていなかった。


窓枠に手をつき、風に乗って運ばれてくるその音楽に耳を澄ませる。


「初めて大に聴かせた歌が、この曲だった」