「じゃあね」
そう言い残し、屋上を出て後ろ手にドアを閉めると、ふう、とひとつ溜息をつく。
……ひとりで食べよ。
押し潰されそうな心を守るように三段の重箱をぎゅっと抱え直し、教室に戻る道筋を歩き出す。
中学の頃から毎日、私が大の分もお弁当を作っていた。
きっかけはたしか、お昼ご飯を持って来るのを忘れた大にお弁当を分けてあげたら、私の料理を気に入ってくれたから、だった気がする。
大好物の卵焼きを作ってくると、大はそればっかり食べてしまうから、バランスよく食べてもらうのに苦心したっけ。
でもこれから先、大がお弁当を食べてくれることはない。
その現実に、まだ心が慣れなくて。